更新料「有効」判決
世間的にはあまり注目されていませんでしたが、今日は不動産の賃貸業界に携わる人が固唾をのんで注目していた裁判の判決がありました。
住宅の賃貸借契約における更新料の受け取りが消費者契約法に照らし不当ではないかと問われたいわゆる「更新料裁判」。
結果は更新料は有効。
もしこれが不当とされれば、消費者契約法が施行された平成13年に遡及して更新料の返還が発生するといったことも予想されただけに、貸主側としては一安心といったところだと思います。
ただこの判決、本質的には消費者契約法の濫用に歯止めをかけたといったほうが適切かもしれません。
すなわち双方が納得して取り交わした契約の内容について、後になって一方的に無効だと主張する権利をどこまで認めるかということが問われた裁判だったのではないかと。
(そういうことは当然判決では触れてはいませんが)
元々消費者契約法というのは事業者と消費者(個人)の間の情報量や交渉力の格差等により消費者が不当な内容で契約をしてしまった場合の救済を目的とした法律ですが、今回の判決ではこのレベルの主張にまで消費者保護の精神を落し込んでしまうと契約行為そのものの信頼性(あるいは契約内容を遵守する精神)を毀損しかねないという危惧があったように思います。
要するに
あなた(原告)は更新料があることを知って契約したんでしょ?
それは情報量や交渉力の格差で事実を誤認したという訳ではないでしょ?
嫌だったらほかの物件を選ぶこともできたでしょ?
こういう点が指摘されたんだと思います。
私は不動産業者ですから一般消費者の方とは立場も見解も違いますが、更新料の部分だけを取ってみれば(あるいは礼金も)、果たしてこういう内容のお金のやり取りが妥当なのか疑問に思うことが無いわけではありません。
そういう慣習があるから今も設定しているというだけで、本当は賃料一本に統一したほうが合理的だとも思います。
ただ更新料や礼金の撤廃を強力に推し進めようとする立場ではありませんし、何よりも一度自らが納得して取り交わした契約の内容について後から異議を唱える(それも解釈の違いといったレベルではなく、根底から否定する)やり方については与することはできません。
今回の判決で更新料に関する判断はでましたが、これを以て大手を振って貸主が更新料を設定できるようになるかと言えば必ずしもそうではないと思います。
何よりも現在は借り手が優位の借り手市場ですので、更新料に限らず市場で受け入れられない契約条件についてはいずれにしても徐々に減っていくのではないかと考えています。
今は判決が出たばかりで先のことはわかりませんが、これで更新料や礼金に関する慣習がドラスティックに変わって行く可能性は少なくなったかもしれません。
それは必ずしも良いことではないかもしれないけれど、その一方で契約行為に関する秩序は守られた。
不動産業者としては申し訳ありませんがとりあえず今はホッとしているというのが本音です。
at 14:40, (株)しあわせハウジング, ノウハウ的な・・・
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