【新聞の記事より】遺産分割訴訟における預貯金の取り扱い変更
本日付の日経新聞の記事です。
以前から注目されていた最高裁の判断ですが、高裁への差し戻しですので判断が変わります。
相続における遺産分割は、「遺言による分割」、「共同相続人による遺産分割協議」で決定しますが、遺言がなく遺産分割協議もまとまらないときは、調停を経て最後は訴訟という形によって決着します。
今回争われたのはこの最後の訴訟の部分で、従来は預貯金(現金とは別の取り扱いです)については法定相続分で分割するという判断でした。
なので記事にもありますが生前に多額の生前贈与を受けている相続人がいる場合など不公平になったり、一番分けやすいお金の形をした財産が硬直的に分けられてしまうことで柔軟な分割を阻んでいるという弊害がありました。
今回の判断は2004年の最高裁の判断を覆すもので、こんなに短期間に最高裁の判断がが変わるというのも珍しい気がしますが(よくは知らないのでイメージです)、それだけ実態に即していない判断だったということなのでよかったと思います。
ただ読売新聞の記事では指摘がありましたが、この結果故人(被相続人)の預貯金を相続人が引き出すことがより一層困難になるという事態は生じるかもしれません。
元々金融機関は被相続人の預貯金を相続人が引き出すことに対して神経質な対応をします。
後になって払い出しに応じた責任を問われることを避けるため、原則的には相続人全員が署名捺印をした遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書の提出が求められ、遺産分割が完了していることを証明しなくては応じてくれません。
従来は弁護士を立てて、「預貯金には各相続人に法定相続分の権利があるので、その範囲であれば相続人は一人でも払い出し請求をすることができる」と主張すると応じてくれるということがありましたが、今後は法定相続分の権利が自動的には認められなくなりますので、当面の生活費や葬儀費用、その他の出費に充てるために故人の預貯金を引き出そうとしても拒否をされる可能性が高くなりました。
裁判所は預貯金の払い戻しを裁判所が認める「保全処分」の仕組みが活用できると指摘したとのことですが、保全処分は遺産分割の審判が始まってから申し立てるものなので即応性に欠けるように思いますがどうなのでしょうか(この辺り詳しくはわかりません、すいません)
今回の判決は遺産分割の実態に沿った正しい判断だと思いますが、その副作用的な面には注意を払う必要があると思いました。
at 10:44, (株)しあわせハウジング, ノウハウ的な・・・
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